昔書いていた詩(118)

   月曜日の女

 
 泣いて流れて恋をする
 私は悲しい女です
 
 街の灯りの揺れる日に
 ひとり佇む街角の
 ピエロの化粧をした女
 
 何が悲しく泣くのやら
 それさえわからぬ一人旅
 グラスの酒も身に滲みて
 落ちる涙も貰い花
 私は悲しい女です
 
 指を数えて待ったとて
 どうせ帰らぬあの人は
 街の夜霧に消えた人
 それでも私は待っている
 私は悲しい女です
 
 
    山頂
 
 山頂のガレ場を
 若者の力強い
 足音が辿ってゆく
 麓から下界の
 ざわめきが吹き上がってくる
 富士の頂から伸びる
 白い帯が
 遠くに見える
 
 三ツ峠の中腹に
 紫の花が
 浮かび上がる
 朝風が淡い若葉の
 臭いを運んでくる
 
 岩場ではザイルが伸び
 ハーケンが朝靄に歌っている
 岩肌が黒く鋭く天を衝く
 
 足音は山頂に消え
 静寂が岩肌を支配する
 
 
    寄生虫
 
 おまえは寄生虫だ
 ほんのわずかばかりの
 闇に生きるている
 
 おまえの住む所は
 おまえの目には見えない世界
 おまえにはそれがわからないが
 おまえは徐々に太ってゆく
 それがおまえの義務で責任
 
 おなえは左の耳で
 悲しいワルツを聞く
 
 そうだそれがおまえの媒体そのもの
 それでもおまえは寄生虫だから
 太り続ける生命の定めを持つ
 
 ああ いつもおまえは死と隣り合わせで
 暮らさなければならない
 
 おまえの宿り主が
 おまえを飼っておくのは
 スーパーのレジ係りのようなものだから
 
 いつも ジャラジャラと音のする世界にいる
 ご主人様は破産寸前の
 金網のように穴だらけ