昔書いていた詩(69) 「ウグイス」 「悪魔」

ウグイス

 
 あかん棒の 繁みに
 鶯が チッ チッ と啼く夜明けに
 寒椿は白い 衣を纏っている
 水面は沈黙し 透明の
 板で 覆われ
 競り上がった 霜柱は 深く伸び
 陽炎が 大気に充満し
 薄い 氷に 穴が開く
 川端の猫柳は 銀色に萌え
 鉛色の大地は 蘇えり
 合歓の枝に 春が
 ぱっと 生きかえる
 
    悪魔
 
 闇黒色の カーテンが
 水平に 張られる
 一舜 闇と化し
 魔の世界が 演出される
 スポットライトに 劇場の幕は下りる
 大都会の ネオンの輝き
 デビル達は 闇を蝕み
 オレンジ色の 俺の 心を犯す
 闇が黒く 跳躍し
 無数の ゴキブリたちが
 汚れた床を 這い廻る
 巨大に 膨張した 
 デビル達が 呪の
 盃を頭上に 放り投げる
 女達は 厚化粧をし
 仮面を 付けている
 俺は 偽りの営みに
 酔いしれ 時を忘れる
 空が 白む頃
 デビル達は 消失し
 俺は 眠る
 街に 溢れるのは
 言い訳に満ちた
 大人達だ