昔書いていた詩(64) 「丹沢山」 「虹」

丹沢山

 
 丹沢山塊は 五月の空に立ちつくす
 長者小屋に集う 若者たちの 
 笑い声が 沢に 響き
 白く帯を 引いた 水無川
 河口に 遠く 思いをはせる
 ザイルが ピィーンと張り
 肩に鋭い 衝撃が 来る
 カラビナが 軋み
 「大丈夫かあー」と 元気な声が
 朝靄に 響く
 ハンマーが 空を切り
 ハーケンは 岩に鋭く 突き刺さる
 ザイルが伸び アブミが鳴く
 黒々とした 一枚岩が
 私の前に 立ちふさがっている
 
    虹
 
 青い空に 人は唄う
 白い雲に 人は思う
 黒い雲に 稲妻が 走るとき 
 人は 驚き 喚く
 耳を 裂く 雷鳴が 轟く
 心が 揺さぶられる
 雨は烈しく 大地を 叩き
 空に虹が 浮かぶ
 心が 七色に 輝いている