昔書いていた詩(14) 「序曲」 「鉈」 「睡眠中毒」

   序曲

 真昼の工事者よ 地表に
 アスファルトの膏薬を塗れ
 偽りの体制を
 引っ剥がせ
 
 思えば
 故郷の村祭りの 独白
 萎縮した男根を肴に  乾杯
 女を食らい 曲がった小指

 気がつけば  雨
 乗りそこねた男の
 足先の 固く冷えた  地表
 よろめいて吐いて 闇

 無限でなくて 有限な明日
 もう一人の俺を
 売りに出そうか


    鉈

 4人の僧侶が鐘を突く
 籠堂の反対派
 鐘と祈りで殺さねば
 明日から食べてはいけませぬ
 
 廃人だから胸の膨らまぬあの娘
 読経の前にぶち殺し
 黒い性器を鍋に投げ込む

 庫裡で朝から味噌を捏ねる
 小僧は独り夢の中
 燃えてるカマドも夢の中


    睡眠中毒

 眠り続ける男には
 掲揚塔に引き揚げられる朝がない
 軒に吊るされる現実がない
 
 眼り続ける男の顔には
 興奮した片腕の左官が
 自分の眠りを 
 一所懸命に  
 塗り重ねてゆく
 
 それでも眠り続ける男には
 針の先程の自由も許されない
 
 或日 道端で眠り続ける
 男を見ました