今書いている詩(321)

   たろうさんの秋(空き)

 トイレの窓からは
 コオロギやスズムシの
 声が聞こえる
 世間が見える
 裏隣の家のドラマが見える

 食器の触れ合う音や
 かん高い子どもの声には
 楽しい夕餉の光景が
 浮かんでくる
 癒やされます

 洋子さんに聞くと
 女の子と男の子がいるという
 「夏休みで 戻っているのかしらね」

 ときどき水道屋のお爺さんが
 法華経を唱えていたが
 聞こえない
 お経よりも孫の方が
 薬になるのかな

 裏の家は老人と大人の世帯
 だから静かです
 わたしの家も
 娘がいたときは
 声が外に漏れていたのかな
 「娘さん いませんね」と
 聞かれたそうです

 ノー天気な娘はいない
 ノー天気でないわたしが
 いる夏の終わりに
 「隣の家は 空きや(秋や)」