今書いている詩(237)


    たろうさんの悲しいかくれんぼう

 「幸せの中にいる人間は
  悲しみを知らない」

 幸せの道に向かって
 小走りに行く
 幼いわが子は
 父がいないのに気づく

 心配してか細い声で 目で探す
 「お父さん何処に行ったの」
 振り返る 立ち止まる  
 泣きべそをかいている

 「お父さんはね おまえと永遠に
  かくれんぼうをするんだよ」
 父は隠れ 涙が頬を流れる

 「こんなお父さんを許しておくれ」
 幸せの幕は下りる
 悲しみの 第二幕が始まる

 「これからおまえもお父さんも
  別々の人生を行くのだ」とつぶやく

 無職で妻に逃げられ 
 無能な酒飲み男の
 物語の始まりと終わり

 「時は押しもどせない 運命を
  乗せた列車は止められない」