今書いている詩(234)


    たろうさんの蔓(つる)

 ゴーヤのつるが
 キュウリのつるが
 今の現実を
 捕まえようとして
 身体を支えようとして
 突き立てられた棒に
 つるを伸ばす

 遊びではない
 今日を生きるために
 ひと夏に
 花を咲かせ
 実を結び
 食べられるために
 重力に逆らい
 天に向かって
 つるを伸ばす

 棒の先には
 未来も 希望も ない
 虚空を掴もうと 藻掻く
 あなたはひと夏で悟る
 65才のわたしは
 ようやく身の丈を思い知る

 温室で飼育された
 あなたの運命が
 梅雨空の隙間から
 陽光に向かって
 伸びる 光る 輝く
 わたしが見ている