2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

昔書いていた詩(30) 「夏の夕暮れ」 「誕生日には」

夏の夕暮れ 熱気を十分に吸い込んで 膨らんだアスファルトの表面が 腐食し始めた 羊肉のように 徐々に弛緩してゆく 両足を投げ出すような格好で 歩いている男の 長身で猫背の 後ろ姿を 水銀灯が写しだし 暗く沈みがちな男の眼に 水銀灯が ボーと映る 「不条…

今書いている詩(30) 「こんな道 あんな道」

こんな道 あんな道 迷い道 誰でも迷って入り込み中々抜け出せませんね 曲がりくねった道 まっすぐで広い道よりも面白いたろうくん人生のようです 抜け道 そんなに簡単に抜けられませんよ あなた自分勝手ですね 大道 真っ直ぐ過ぎて面白くありませんね 私は歩…

昔書いていた詩(29) 「白壁」 「公園」 「サーカスの思い出」

白壁 修復すべき壁に囲まれて 男が戸惑っている 幾年月の星霜に晒されて 壁は朽ちている 男の手には新しい土壁 だが白壁は男の修復を拒んでいる 自信がないのだ男には 九月の風が土埃を揚げて 壁を宥める 歴史に綴られた過去が ずーと伸びている 公園 飛行機…

今書いている詩(29) 「心のアルバムは…」

心のアルバムは… 悲しい思い出は 心のアルバムから 剥がしてしまおうか それともあの時の 白黒写真のように 破り捨ててしまおうか いやいやそれでは思い出が 修復できなくなってしまうな 妻に内緒で心のアルバムに 貼って置いたあなたとの思い出は どうしよ…

昔書いていた詩(28) 「喪失」 「宇宙の誕生」 「八月の或日」

喪失 何処で失くしてしまったのか 何処で忘れてしまったのか 僕らが育ったあの頃 何処に行っても 貧しさは 充填されたガスボンベのように 周りに転がっていたが 希望は新品の鉛筆を 削るように 少しづつ 短くなったが まだ残っていた 今の、貧しさは 時々通…

今書いている詩(28) 「還暦男の願い」

還暦男の願い 何気なく咲いている菜の花 何気なく咲いているタンポポ 何気なく飛んでいるモンシロチョウ そこに仲間のモンキチョウもやってきて 春の舞踏会の始まりです あなた達は どうして黄色の花なのですか 黄色い花は昆虫が気づきやすい 色だからなので…

昔書いていた詩(27) 「夢」 「革命家の嘆き」

夢 眠りの中で 釈迦のポーズをして 呪術師の言葉に 聞き込む男は 目覚めて 両手に呪文の入ったバケツをぶらさげ 廊下に立たされた 小学生に変身する その中身を自分の墓石に 注ぎ込みながら しだいに成長する 蛾の幼虫のように 脱皮してゆく 男には学校も 教…

今書いている詩(27) 「偉大なるお方は何処に」

偉大なるお方は何処に 花は咲き 鳥は啼き 木々は芽吹き 大気は揺らめき 地球は月を友に 太陽の周りを公転する 太陽風は宇宙に向かう 銀河系宇宙の果てへと ビッグバンから始まる 大宇宙の法則を打ち立てた 偉大なるお方が 私たちの神 あなたですね 時々確認…

昔書いていた詩(26) 「必然性」 「貨車」

必然性 真夜中に 突然にジョキングを始めると言って 駆け出した男に 仕上げたばかりの 入れ歯を磨きながら 老人の歯科技工士が聞く 「どうして走るのか 老いれば枯れる身体なのに」 戸惑いながら男は答える 「ならば どうして1年は365日で、大安の次に仏…

今書いている詩(26) 「魂の救済」

魂の救済 神さまお聞きします 教えてください 無抵抗で死んでいった 子どもたちの魂は 何処に行ったのでしょうか 何処で彷徨っているのでしょうか あなたの「プログラムのプロセスのミスですよ」 なんて私は認めたくない 認めませんよ だから祈りの呪文も言…

昔書いていた詩(25) 「予感」

予感 ウインチで巻き上げられた偶然が 43階のビルの屋上から落下するように 死は加速されて物憂げに歩く 地上のお前を突き刺す そんな 或日 夕陽が黄金に燃え 都会の裏町に隠れた 偽善者を映す ちょと貴方 天国行きの時刻表が改正されました お間違えのな…

今書いている詩(24) 「還暦男の告白」

還暦男の告白 幸せってなんですか 不幸せってなんですか 本当は何も考えない時が 幸せなんですね あなたはどうですか 逃げ出す道はないですよ あなたの感じ方の問題ですからね 幸子さんは良くつけられる名前ですね けれども幸という字は危うく難を 逃れられ…

昔書いていた詩(24) 「凍る」 「ロストボール」 「求職者」

凍る 季節風の吹き出しが 雪女郎と共にやって来て 山頂を真冬の壺に押し込め 白く凍らせる 石室でつららを飴のように しゃぶりながら 狂乱する冬の使者を やり過ごしていた 山男に出会った はにかみながら 差し出す手を 握ったら 山男の喜びが 石室に拡がっ…

今書いている詩(25) 「還暦男の告白(2)」

還暦男の告白(2) 月日は過ぎても青春の思い出は消えない 燃焼しつくされない魂は頻りに昔を振り返る あの日あゝしていればと考えてしまうのが人生です 私は定時制高校へ1年遅れて入学しました 3年の春に新しい科学の先生が来られた それが越川郁子先生で…

今書いている詩(20) 「単独行」 「山の向こう」 「訪問者」

単独行 凍った道をあるいている 風が岩笛を吹き 星は真上にいる 北の岩棚で 月が宴を見ていた 山男が去ってしまえば 冬の道はひとりだ 凍りついた風がその上を 岩笛を吹きながら 通り過ぎるだけだ 山の向こう あのあたりに山があれば 季節は独りで 廻る風車 …

今書いている詩(20) 「誤解してました」

誤解してました セイタカアワダチ草さん あなたは今日も 北国の空の下で 咲いているのですね 都会のロープの張られた 空き地に咲くあなたは 花粉症の原因だと 罵られ嫌われて 北アメリカから帰化したのに 悲しい過去を背負った セイタカアワダチ草さん でも…

昔書いていた詩(19) 「二十歳の朝」 「歩く」 「女ひとり」 「便り」 「門出」

二十歳の朝 歴史の眠りから覚めた 記憶の弓が 憎悪の瞳に燃える 白と黒の肌を持った 男たちの手で幾重にも 引き絞られ 不信の荒野に 朱色の矢を放つ時 戦だと叫んで 踊り出すのは 女でも子供でもない貴方です 男たちはベニヤ造りの裏店で 札束を陰干ししなが…

今書いている詩(19) 「運転手(3)」

運転手(3) 人類が絶滅して200年も経つと 人類の築いた文明は大自然に還り 微かにプラスチックの人形や アルミの窓枠が残るだけとなる 或る日の未来に 新しい人類に似た 生命体が宇宙船で 地球に降り立ち 「なんだ こりゃあ」と首をかしげる わたしが此処…

昔書いていた詩(18) 「希望」 「勘違い」 「落下」

希望 記憶の谷を過ぎれば 隘路が続いている そのず―と先に 必ず聞こえるはずだ 心のプレリュード さあ だから行こう二人で 僕らの体が錆びないように 群青色のバイクを駆って 果てしない戦いの日々を生きる 僕らの進み具合いは 沈没船の錨をつけて進む 幽霊…

今書いている詩(18) 「運転手(2)」 

運転手(2) あなたは誰も見ていなければ 自分さえ良ければ 多少悪いことをしても 良いだろうとそんな思いに 駆られたことはありませんか タバコのポイ捨て ペットボトルの投げ捨て 赤子の産み落とし 子供の虐待 信じられない殺人 神のプログラムには 悪の清…

昔書いていた詩(17) 「余り受けない詩(4)」「地下鉄ブルース(余り受けない詩5)」「余り受けない詩(6)」

余り受けない詩(4) 愛の言葉を 真上に投げて 心の棘で 突き通す そんな貴方を 知らなくて 今日も来ました 北新地 嘘で飾った 愛ならば 合歓の 小枝で かき集め ネオンの海に 捨てようと 今日も来ました 北新地 どうせ儚い 愛と夢 いっそ死ぬまでついてゆく …

今書いている詩(17) 「愛をなくしました」

愛をなくしました 私は愛の入った財布をなくしましたと ローカル局のアナウンサーが嘆いています 愛はどこへ行ってしまったのでしょうね 砂丘の中にでも埋もれてしまったのでしょうか 都会の街角で愛の正解を求めて 彷徨う愛の求道者もいますよ 愛ってなんで…

昔書いていた詩(16) 「余り受けない詩」「余り受けない詩(2)」 「夢の国(余り受けない詩3)」

余り受けない詩 嗚呼 それなのに どうして 別れなければいけないのかしら 男と女 君はそう言って 去って行きました 霧に舗道が 濡れて光る 夜だった 嗚呼 思い出すね こんなに 霧の降る夜 銀のヒールを 両手に持って 独りで歩いていた君を 水銀灯が見つめて…

今書いている詩(16) 「心が…」

心が… 心が閉まっている私 鍵をお貸ししますから明けてください 心が気鬱なあなた 空は無限に広いですよ オーラをあげますよ 心が壊れたあなた わたしが作り直してあげますよ 心が悲しいあなた 時間が消化してくれますよ 心がうつろなあなた 笑う練習でもい…

昔書いていた詩(15) 「切断」 「癌の男」

切断 建具屋のオジサンが線引きで 不要な角材をジョーンと切断した 右指をパチンと鳴らすと 弾けて飛んだ僕の嘆きが 君に聞こえるか 今 あの街角を ユイ―ンと曲がっていくのは 僕の過去と未来だ そして 現実だけが取り残された時 君は黙って立っていたね 建…

今書いている詩(15) 「幸せ係数」

幸せ係数 休みの日に植木を少し切ったり 庭の水道ホースの元栓を変えたり 資材置き場にダンプカーが来て スズメたちのお喋りがやみ ラジオから昔の音楽が流れ テレビでビデオのロードショーを見たり ソファーではあなたが横になっている (先程まで前の道路…